和登さんは私のペースに合わせてゆっくり食べてくれた。
平らなお皿に一口サイズに盛られている先付から頂く。野菜の和物がサッパリして食べやすい。煮物椀は蓋付きの椀で出てきたため、椀を左手で抑えて右手でふたを取り、汁を一口味わい、具を食す。
和登さんが丁寧に説明してくれ、無知な私は恥をかくことなく全てを食べ終えた頃には、しばらく動けそうにないくらい満腹になっていた。
「和登さんごめんなさい、ちょっと動けそうになくて……」
満腹すぎてお腹をさすっていると、和登さんは「ごめん、無理させたね」と優しい声色で私の手の甲に手を当てた。その仕草にまた胸がドキッと高鳴った。
もし仮にお腹の子ができたら、和登さんはこうやって優しく擦ってくれるんだろうなと想像してしまった。和登さんは良いお父さんになりそうだ。
そんな私達に亭主は、
「お二人はいつからお付き合いを?」
と尋ねた。和登さんはやんわりと返事をする。
「お付き合いはしていないんです。いきなりプロポーズしてしまい、結婚できることになったんです」