「だから?」

「だ、だから……両親には挨拶まではしなくても良いんじゃないでしょうか。指輪買ってもらっといてあれですけど、やっぱり結婚はなしにした方が……」

「それはダメ。だって約束してくれたろ。半年は一緒にいるって」

「は、はい……」

「俺、この先結婚なんてできないって言いきれる。だから、俺の今までの後悔のためにも、俺のワガママに付き合ってほしい」


 車内で深々と私に頭を下げる和登さん。


 和登さんのワガママに付き合っているだなんて思ったことはない。和登さんが今私にお願いした言葉は、私がそのままそっくり言いたいことなのに。


 私の方が、後にも先にも和登さんだけだ。


 和登さんは私との結婚に対してとっくに覚悟を決めてくれているのに、まだ完全に覚悟を決めきれていない自分自身が恥ずかしくなった。


「変なこと言ってごめんなさい。私の両親は仕事をせずに祖父が残してくれた遺産で暮らしているので、顔合わせはいつでも大丈夫だと思います」