「そちらはまた全てのサイズの在庫がございますよ。お客様、よければこちら、先日から数量限定で販売しております、ベリが丘限定デザインの指輪付けてみられますか?」
男性店員が差し出してきたのは、SNSで可愛い、綺麗、おしゃれと評判のダイヤが埋め込まれている指輪だった。ダイヤモンドが大きく輝いている。小さいお花の模様が埋め込まれている形のお洒落な指輪だ。
「指輪にたくさん埋め込まれていてとても素敵です!」
「こちら、プラチナダイヤを仕様しており、数量限定販売で数が非常に少なく、お客様の指のサイズですと、これが最後のお品になります。売り切れ後の入荷予定はございません」
値段を見てみると一千万円と、驚くべき値段が書かれてあった。触れるのも恐ろしい値段だ。
「……あ、ありがとうございました。お気持ちだけで大丈夫です」
男性店員に指輪を返そうとすると、和登さんがやってきた。
「どう? いいのあった?」
はめているところを見られないように、すかさずはめていた指輪の手を後ろに隠す。
「は、はい。この指輪を……」
最初にこれにしようと決めていた指輪を指差し「これがいいです!」とお願いする。
「……これ? 本当に? 値段は気にしなくていいんだよ?」
「いえ! これに一目惚れしまして……」
納得がいかない様子の和登さんから「さっき店員に進められたんだけど、亜矢に似合いそうな指輪があったから、それも見てみようよ」と進められたが、頑なに拒否する。