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仕事場に一週間休み貰いに申請しに行くね、と、病院に向かった和登さん。「研修医の子も引き受けたばかりだったから、一週間だけ仁田先生に引き継ぎしてきた」と、報告してくれた。
「大変なときにスミマセン……」
「全然。それじゃ行こうか」
区役所の窓口に婚姻届を貰いに、ベリが丘ショッピングモールの最上階へやってきた。
さっそく婚姻届を広げて空いている机で名前と住所を記載する和登さん。私も、元の住所と名前を書き印を押す。後は保証人の欄が埋まれば私達は夫婦となるのだが、保証人は誰にお願いしたらいいのだろう。
和登さんは婚姻届をファイルに入れ、鞄の中に閉まった。
「亜矢、大丈夫? まだ歩ける?」
時折心配してくれながら私も「大丈夫」と、受け答えをする。その足で向かったところは、
「いらっしゃいませ。先ほどお電話頂いた羽倉様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
ベリが丘でも有名な結婚指輪や婚約指輪のブライダルショップだ。
「和登さん、指輪買うんですか!?」
「うん、結婚するんだし」
どれにしようか、と見て回る和登さん。まさか、指輪を買ってもらえることになるとは思っていなかった。
店内の中はとても高級な空気が漂っている。指輪は全てショーケースに飾ってあり、希望でサンプルを見せていただける。
どれも全て可愛いのだが、値段は全然可愛くない。半年しか一緒にいないんだ。いずれ離婚する私達の指輪は、一番安いので良い。
和登さんは店員に結婚指輪でオススメはどれかを聞いていたが、私は数登さんから離れて一番安い指輪を探す。できれば、普段付けできて、シンプルでダイヤもついていない数万円台のものがいい。
「あっ! あった!」
ペアで十万円の指輪を見つけてしまった。
シンプルかつ、ダイヤも付いていない。これなら気兼ねなく提案できそうだと思い、別の店員に在庫があるかの確認をする。