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目の前には愛しの羽倉先生。そして、
「俺の妻になってほしい。そして半年後、約束通り離婚しよう」
思いがけないプロポーズを今、受けている。
けれど、これは羽倉先生の善意。一週間経ったらこのベリが丘を去らなくてはならない私のことを想って言ってくれている。
善意で私と結婚してくれるのは、私には祖父との関係性があるため。この結婚にはそれ以上の意味なんて持たない。なので、
「よろしくお願いします」
私は羽倉先生のプロポーズを受けることにした。
仁田先生から、羽倉先生が私と私の祖父の写真をいつも肌見放さず持ち歩いていることは聞いた。私の祖父の死を、私以上に引きずっている羽倉先生。
私の脳に何か異常をきたしていたとしでも羽倉先生のせいなんかじゃないのに。私に何かあったらどうしようとまで、責任を負わせてしまっていた。
「ですが、羽倉先生。私が無事に検査を終えて離婚した後は、祖父のことは綺麗さっぱり忘れて幸せになってください。そうじゃないと、祖父も報われないと思うので」