「莉緒香。ありがとう。気持ちだけいただいておくね」

「気持ちだけって……大丈夫よ、亜矢はかわいいんだから、亜矢が金持ちじゃなくっても結婚したいって思ってくれる人はいるよ! さすがに相手が医者とかだと家柄は関係してくるかもしれないけど、医者と恋愛だなんて、そんな漫画やドラマみたいなことは起きないんだから心配しなくていいよ!」

 私に、ここでいい人を見つけようと、促してくる莉緒香。

 医者と聞いてすぐに思い浮かんだ人は羽倉先生だった。

 羽倉先生は医大に入ってから彼女がいないと言っていた。仕事が恋人とも言っていた。もしかしたら選び好みしすぎて理想の女性がいないだけなんじゃないだろうか。

 羽倉先生の彼女になれる人はどんな人なのだろう。

「莉緒香ありがとう。出会いとかはとりあえず置いておいて、私はこの一週間、莉緒香とここで楽しく過ごせれたらいいから」

 そう答えると莉緒香は「じゃあ今日は行きつけのBar(バー)があるから付き合って!」少し強引に私の肩を摩る。

「旦那がいるときはなかなか呑みに行けないからさ。それに、お忍びのBarだから有名な人たちもいたりするのよ! この前なんてベリが丘総合病院に勤めてる羽倉先生がいたんだから!」

 「きゃー」と手で両頬を抑える莉緒香。つい、

「は……羽倉先生に会えたらサインしてくれるかな?」

 バッグから本屋で購入した羽倉先生の書籍を取り出す。莉緒香のテンションにつられて相談してみた。