亜矢ちゃんの顔に目を向ける。亜矢ちゃんは苦悶の表情を浮かべていた。

 『私、一週間後には帰るんで』と言われているようで、こんなに近くにいるのに俺の気持ちは少しも届いていない。

「それなら、検査が終わるまでずっとここにいていいから」

「検査が終わるまでって、半年間ですか!? いえ、そういうわけにはいきません。自分のことは自分でなんとかしますので」

 亜矢ちゃんは俺に心を開いてくれない。このままの関係だと彼女はこの先ずっと心を開いてくれない。俺はその先の、もっと深い関係性でいたいのに。

 ふと、仁田先生から言われた言葉が脳裏によぎった。


 『羽倉先生運命の人見つけちゃったんじゃないですかー?』

 運命の人。俺もそう思う。亜矢ちゃんとここで再会できたことは運命だと思うし、運命にしたい。その一心で、

「亜矢ちゃん、俺と今すぐ結婚してほしい」


 人生初のプロポーズをした。