『亜矢ちゃんが未破裂脳動脈瘤かもしれない』そんな不安を抱えながらなんとか当直を終えた俺は急いでホテルへと戻る。
部屋へ入ると、亜矢ちゃんは「羽倉先生、お帰りなさい。今日仁田先生と遊びに行ってきました。お金もカードも使わなかったのでお返しします」と、今朝サイドテーブルに置いていたブラックカードと厚みがある白い封筒をテーブルに置いた。
「持ってていいのに」
「いえ、仁田先生にもたくさん買っていただきましたし、そういうわけにはいきません!」
健気な亜矢ちゃん。
もっと欲しいもの買ったり、貪欲でいいのに。おもわずぎゅっと抱きしめる。
「どうしたんですか?」
顔を真っ赤にして恥ずかしがる亜矢ちゃんがかわいい。愛おしくて離したくない。力強く抱きしめながら、
「仁田先生から聞いた。亜矢ちゃんが脳ドック受けるって」
そう聞いてみると、亜矢ちゃんは軽い様子で「はい」と頷いた。
「めまい、大丈夫?」
「はい。今はなんともありません。長時間立ってたらフラッとするくらいで大したことではないんですが。一応、検査した方が良いということになりまして」
「……もう検査の予約入れた?」
「はい。仁田先生といる時に検査の予約入れたんですが、半年後になるみたいで。検査時はまたベリが丘に来ますね。それまで休んでもいられないのでいっぱい働きます」
ガッツポーズをして不安を掻き消す亜矢ちゃん。
むしろ、戻って働く気でさえいる。
「半年後か……脳ドックは脳外科医も担当するから、俺か仁田先生が担当できたらいいんだけど」