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院長室に小川くんを連れて入ると、小川くんは今までの仕返しと言わんばかりに本田先生の愚痴を吐き出し、今日の手術の経緯を全て話してしまった。
「分かりました。そういうことなら、羽倉先生は小川先生の指導をよろしくお願いします。それにしても、本田先生には困りましたね。指導もしない、手術をするのを拒むようでしたら内科に転科してもらうか、違う病院に移ってもらうほうがいいですね」
六十代半場の矢沢院長はやれやれ、と、目頭を指で抑え本田先生の行動に首を傾げていた。
「ですが、本田先生は今日のオペで少なからず成長したような気はします。覚悟が芽生えたような……僕にはそう見えました」
すかさず口を挟むと、小川くんは「羽倉先生は味方でいてくれなきゃ困ります!」と言いながら不安気な顔をした。院長は俺達の顔を見て、またため息を吐くなり「実はですね……」と、本田先生のことを話しだした。
俺がベリが丘に移動してくる前、本田先生が執刀のオペで血管を損傷してしまい、出血が酷く、患者さんが亡くなってしまうということがあったらしい。
それ以来、手術に率先して入らなくなったという話を聞いた。