患者さんが手術室から集中治療室に運ばれていくところを見届けた後、小川くんと一緒に手術室を出る。

「羽倉先生! オレ、感動しました! あんなに細かい腫瘍剥離をササッとできちゃうなんて!」

 手術室から出るなり小川くんはオペ時の興奮を俺に伝えてきた。

「ありがとう。でも、本田先生も一緒だったから無事にやり終えたんだよ」

「だとしても、羽倉先生のスピードは半端なかったです! 横のモニターで見てましたが、実質一人で剥離してるようなもんでしたし!」

 小さくガッツポーズをして「オレもあんな手術してみてぇ!」と、手術に対しての意気込みを語りだした。

「羽倉先生、暇なときでいいんで指導してください!」

「うん。もちろん。今日は急遽オペ室に来てくれたのに見学だけでごめんね」

「とんでもないです! 緊張感漂うオペ室……痺れました!」

 興奮が止まない小川くんを横目に、手術帽と手術マスクと手袋とガウンを脱ぎ、使い捨てのためそのまま処分をする。

「よし、じゃあ一回医局に戻ってカルテを記入してから再度患者さんの回診を一緒に回ろうか。その前に院長に小川くんの指導医の件を伝えに行くから」

「はい! わかりました! よろしくお願いします!」


 手術を目にするとオペはしたくないと恐れる研修医は多いが、小川くんはやる気に満ち溢れている。教え甲斐がありそうだ。