「オ、オペですか!? だめですよ! 他の病院ならまだしも、うちは富裕層のお客さんが多いんです! 脳は数ミリズレただけで後遺症を伴ったり合併症なんかも出たりするっていうのに、他の箇所の手術ならまだしも、脳外では研修医に手術はさせないでください!」
手術室の前へ着き、本田先生と一緒に手洗いをしながら、本田先生の忠告に返事をする。
「でも、小川くん頑張ってますよ。脳血管の縫合の練習だって毎晩遅くまでしてますし。僕らだって、実際オペに携わらなきゃ上手くならないじゃないですか」
「羽倉先生はいいですよ! 海外の大きい病院でオペをいっぱいさせてもらえて、オペのスキルもガンガン上がったんですから!」
完全にヘソを曲げてしまった本田先生。
脳外は救急を要するオペが他の科と違って多い。本田先生が救急患者にも素早く受け入れ体制を取っていれば、こんな小言は出てくることはないだろう。
『脳は数ミリズレただけで後遺症を伴ったり合併症なんかも出たりするっていうのに』
本田先生が今俺に告げたこの言葉が全てを物語っている。本田先生はただ単にオペに入ろうとしないだけだ。