「抱かれたりなんてしたら、憧れが好きになっちゃいます。羽倉先生の負担になりたくないんです。さっき仁田先生が言ったように見ているだけが一番いいんです……」

 仁田先生は注がれてあった烏龍茶を飲み干した。

「亜矢ちゃん違うのよ。私はね、亜矢ちゃんと違って可能性なんてないの。内科の久保先生はいい感じの看護師いるし。だから私は見てるだけでいいの。でも亜矢ちゃんは違うでしょ? 羽倉先生に『一週間家にいて』って言われて、夜も誘われたわけでしょ? 私とは大違い!」

 同類に扱うな、と言われていそうで言葉が詰まる。

「す、すみません……」

「ごめんね、亜矢ちゃんを責めてるわけじゃないから。私はね、これでも羽倉先生のことをライバルとして、友として、戦友として応援してるから、つい感情的になっちゃった。だって羽倉先生、人の感情あるのかってくらい、いつも何考えてんのか分からない人だったし。だからね、羽倉先生のあんなに焦った顔見て、亜矢ちゃんには悪いけど『この子だ!』って思っちゃったの。だから、どうしてもどうにかしてあげたかったの」

 仁田先生の羽倉先生に対する想いに胸が詰まる。

 私は羽倉先生が以前からどういう人だったかなんて分からないけれど、仁田先生から得る情報で羽倉先生の過去を想像することができる。