「私が気になってる先生は、内科の久保先生なのよー! イケメンで男前! もー、内科に転科しようかしらー」

「え!? 内科に移動しちゃうんですか!? 羽倉先生、仁田先生には絶大な信頼を寄せているように見えますが……」

「そうなのよねー、まあ、転科の話は冗談。一緒の科で働いてたら嫌なとこまで見ちゃうでしょ。好きな人はジッと見てるくらいが一番いいのよ!」

 仁田先生は端に置いたフォークを再度手に取り、残りの牛肉のカルパッチョを口の中に頬張った。

 しばらくしてから次はカプレーゼというサラダがテーブルの上に運ばれた。トマトとチーズが乗っていて、上にはバルサミコ酢が掛かっている。一口食べると、チーズのなめらかな味わいとトマトの甘酸っぱさが良く合う。

『好きな人はジッと見てるくらいが一番いい』

 先ほど仁田先生の言葉でそうだな、と、納得した。

 『好きな人』と言われて浮かんできた人は羽倉先生だったけれど、羽倉先生を好きな人にしてはいけない。