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私の目の前には酔い潰れてしまっている仁田先生と柳先生。二人を送って行くはずの羽倉先生からなぜか、
「俺と一緒にいて、亜矢ちゃん」
と、必死な顔でお願いされた。
羽倉先生は今から帰っても危ないから、と、一緒にいてくれるとのことだ。
一度は断ってみたけれど、それでも頑なな羽倉先生の善意を拒むことはできなかった。
「ご迷惑ではないですか?」
そう質問すると、「全然迷惑してない」と嬉しそうな表情を私に向けた。羽倉先生の笑顔は私の心を照らす。
「ちょっと待っててね」と、席から一旦離れお会計をしに行ってしまった。
羽倉先生は今日一日私を心配して一緒にいてくれる。だから間違っても『好き』という感情はもってはいけない。憧れを恋愛に履き違えてはいけない。そう言い聞かせ、仁田先生と柳先生の肩に腕を回し、店内から出る羽倉先生の後を追う。
黒い高級車の前に着いた。羽倉先生は車のドアを開けると、後部座席に柳先生と仁田先生を乗せる。
「亜矢ちゃんは助手席に乗ってくれるかな」
促され、助手席に乗りシートベルトを着用した。
「あ、あの、羽倉先生。ご馳走様でした。私までご馳走してもらってすみません」