女の先生は「亜矢ちゃん」と私の名前を呼び、続きを話すべく口を開いた。

「お金がなきゃご飯は食べれないし、ここに来ることもできない。お金がなきゃ、今日みたいに偶然羽倉先生に会うこともできない。お金がなきゃ病気が発見されたとしても入院もできないし手術も受けられない、違う?」

 『病気が発見されたとしても入院もできないし手術も受けられない』

 きっと、先生達はそういう患者を何人も見てきたのだろう。そう言われるとその通り過ぎる。でも、私が言いたいことはそういうことではない。女の先生が私に差し出す札束がいらないと返しているだけだ。私だって、全てのお金が必要ないと言っているわけではない。

「確かにその通りだと思いますが、私は今先生が差し出してくれているお金をそんなにいらないと返しているだけです……いくらなんでも百万円は怖くて受け取れません」

 女の先生が頑ななように、私も頑なに拒否をする。

 すると、女の先生は「もー! 分かった! これは亜矢ちゃんが家に帰ったら現金書き留めでもなんでも好きにしてくれていいから。とりあえずこの場は受け取りなさい! そうじゃなきゃ私の気が治まらないのよー! あんな胸糞な光景見せられてイライラが治まらないからこれでチャラにさせてー」と嘆いた。