「和登さん、指輪……」

「亜矢も今日してくれるって言ってたから、俺もペアの指輪付けてみた」

 私の物とは少しだけデザインが違っていた。男性物はよりシンプルな造りになっている。

「女性の物はこの柄で、男性の物はこの柄なんだって」

「和登さんのために創られたと言ってもいいくらい、その指輪、凄く似合ってます!」

「ハハッ、それを言うなら俺の方」

 私は元々家柄セレブの出というわけではない。昨日は失礼がないようにしないといけないという気持ちで頭がいっぱいで、和登さんには秘密でマナーの記事をネットで検索して片っ端から読んで頭に叩き込んだ。

 今日もピリついた緊張感は抜けていない。

 何事もなく、上手く終えることができますように。しっかりとお役目を果たすことができますように。

 ――和登さんの車は某国大使館へと到着した。建物外は厳重な黒い門柱で対策をしており、建物はモダンチックな造りになっていた。

「す、すごい……和登さんは何回か来られているんですか?」

「俺も初めて来た」

 和登さんの表情もどことなく、緊張の色が窺える。