嬉しそうに笑う和登さんが眩しすぎて、この光景と一緒に、和登さんの笑顔も目に焼き付ける。
この先何があっても頑張れるような気がした。
「和登さんが手術していただいたおかげです。本当にありがとうございました」
和登さんが手術をしてくれなかったら、私は今頃どうなっていたか分からない。
「亜矢を助けられてよかった。俺、本当に医者をやめようと思ってたんだけど、亜矢に『俺を必要としてくれる患者がいる』って言われて、そう言ってくれたことが嬉しくて初心に戻れたよ。一人でも多くの人を救いたいって気持ちだったこと、忘れかけてた」
『だから、俺の方こそありがとう』と私に感謝の気持ちを伝える和登さん。
私は何もしていない。仁田先生が教えてくれたから、私は和登さんが医者を辞めようとしていることを知ることができた。
全て仁田先生のおかげだ。
和登さんは持っていた鞄の中から一枚の用紙を取り出した。それは、紛れもなく私が渡した離婚届だった。
和登さんの名前も記入してある。
その用紙を見るまでは、もしかしたらこのまま一緒にいれるかもしれないと思った。けれど、もう、和登さんの心のなかでは整理ができたのだろう。
今から離婚を切り出されるんだろうか。自分がしてしまったことの罪を今更ながら悔やむ。