「――初めまして」
そう返すと、お義母さんが申し訳ないような、悲しんでいるような、なんとも言えない目をしながら私に姿を見せた。
「お義父さん、お義母さん、どうぞ入ってください」
私が声を掛けると、赤間さんがご両親の元へ近づきお義母さんの手を引いた。二人は私のすぐ近くのイスに腰を掛けた。
「亜矢さん、ごめんなさいね。前はひどいこと言って追い払って。亜矢さん、和登の内面を大切に思ってくれていたのに……」
お義母さんは私を前にして泣き出してしまった。
何でだろう、既に死亡フラグが立てられているかのように感じてしまう。そんなお義母さんにお義父さんは、
「内面?」
と、問いかけた。
「あの子ったら、亜矢さんにやっすい無名の指輪渡してるのよ! ダイヤ一つもついていない! 亜矢さん、あれいくらだったの!?」
お義母さんは相当指輪のことが気になるらしい。
「え、えっと……和登さんの指輪とペアでだいたい十万弱ですが、私があれがほしいと言ったので」
「じ、十万!? 結婚指輪に!? 信じられないわ! よくそんな非常識な男を旦那にしたいと思ったわね、亜矢さん!」
「いや、でも、あれは私が……」
「普通はぶん殴ってたたき返してるところよ! 赤間さんはやっすい指輪を好きな人から頂いたらどうするの!?」
まるで私の話を聞かないお義母さんに赤間さんは「奥様と同じくぶん投げて叩き返してますね」と、淡々と答えた。