「仁田先生……私は和登さんに幸せな道に進んでほしいんです」

 布団の裾を握りしめながら歯を食いしばる。そんな私に、

「亜矢ちゃんほど、羽倉先生を心の底から大切に思ってる人はもう現れないだろうね。亜矢ちゃん、自分を犠牲にしてまで羽倉先生の幸せのために離れる決断できるんだもん。私だったら絶対無理! 死ぬまで羽倉先生をコキ使う」

 仁田先生は笑えないことを言い出した。

「羽倉先生をコキ使うだなんて……仁田先生でも許しません!」

 ぎゅうっと布団を鷲掴みにする。

 仁田先生は私に、

「――そう、許しちゃダメ。羽倉先生とどういう風に向き合わなきゃいけないか、もう亜矢ちゃんは分かったでしょ?」

 優しく問いかけた。そんな仁田先生に「はい」と、強く頷く。

 手術を受ける前に和登さんときちんと伝えたい。

 ちゃんと好きだと伝えたい。