ただ、一つ分かったことは、

「……私のせいでやめるんですね」

 羽倉先生が私のせいで医者ではなくなってしまうということだ。

 和登さんはたくさん努力してお医者さんになったのに、こんな風に和登さんの人生をめちゃくちゃにしたかったわけじゃない。

 言葉が出てこない私に、『亜矢ちゃんのせいってわけじゃないけどさ』と前置きをしつつ、

「たった一人のためにそこまで決めることができるのは凄いことだよ。羽倉先生が一生涯かけて求めてる人は亜矢ちゃんって分かる。亜矢ちゃんは羽倉先生が他の女性と歩いていたら寂しくない?」

 私に質問をした。

「寂しいです……」

「もし羽倉先生がどこぞの社長の娘と再婚したとして、羽倉先生の財産を好き勝手使ってたら? その子から罵声浴びせられてたら?」

「許せないです」

「羽倉先生は亜矢ちゃんと離婚したら確実にお先真っ暗。人生さえも投げ出すね」

「そんなのダメです。私、和登さんと約束したんです。半年経ったら幸せな道に進むって」

 言葉にすると共に、ハッと我に返った。

 離婚よりも大切なことを私は和登さんと約束した。