仁田先生から「他の方法を探しましょう」と言われたけれど、亜矢の脳動脈瘤はそういうわけにもいかない。選べる手段も残されていない。
「俺はやれます。力を貸してください。お願いします」
仁田先生と柳先生、本田先生にも頭を下げた。
「確かにチーム羽倉は優秀なお医者さんで揃っていますが、皆が皆、羽倉先生のように凄腕なわけじゃないんですよ! 術後にバイパスが閉塞した場合、脳梗塞を生じる危険性があるんですよ!?」
本田先生からそう言われ、柳先生は「確かに」と頷いていた。そんな柳先生に質問をする。
「……柳先生は麻酔科医として手術場に一緒に入ってくれますか?」
手術場には絶対に麻酔科医が必要で、麻酔科医は患者様の急変をいち早く見抜かなくてはならない。柳先生ができると言わなきゃこの手術はできない。
柳先生は一言、「入りますよ」とにこりと微笑んだ。
「亜矢ちゃんには救われた部分があるんで、全力で取り掛かります」
俺に少し古くさいグーのポーズをして見せる柳先生。そんな柳先生に、仁田先生は、
「……救われたって、何を救われたんです?」
すかさず質問していた。
「いや、ほら、羽倉先生に良いお相手が見つかってホッとたんです。てっきり仁田先生も他の看護師や女医みたいに羽倉先生狙いだと思ってましたからーハッハッハッ゙!」
半場告白じみたことを言ってしまった柳先生に、仁田先生は「はあ?」と冷たく聞き返していた。