「手術はできないんですか……亜矢はいつ破裂するか分からない恐怖に怯えながらこの先生きていかなきゃいけないんでしょうか……」

 お義母さんが涙を流しながら俺に訴えかけてきた。

「いえ。咲村さんと同じようにはさせません」

 俺は用意した資料を亜矢達の目の前に並べた。

「…………これは?」

 お義父さんの問に、目の前のイスに座って回答をする。

「クリッピング術が難しい場所に脳動脈瘤ができているので、バルーンカテーテルを用いながらのバイパス術になります。開頭し、チタン製クリップを脳動脈瘤の根元にニ箇所挟み確実に閉塞します。その後、頭皮の血管などを用いて新しい血管を再建し、脳動脈瘤以外の部位に血液が流れるようにします」

 図を指しながら丁寧に説明をする。お義父さんは「手術が可能なんですか?」と、俺に質問をした。そんなお義父さんにゆっくり頷く。

「はい、非常に難しい手術にはなりますが可能です。術式名は脳動脈瘤トラッピングバイパス術といいます」

 一通り説明した後に亜矢が「バイパス……」と、一言だけ呟いた。

――この手術は難しい。

 現に、この術式でオペをするということが決まるまで仁田先生や麻酔科医の柳先生にも反対されていた。