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三時間半ほどかけて全ての検査を終えた。
時折急かしく院内を歩く和登さんを見かけた。患者さんの呼びかけに笑顔で対応に応じる姿はとても眩しく、テレビで見た羽倉先生そのもので。やはりお仕事をしている姿はかっこいい。
他の患者さんも同様、羽倉先生が横切ると立ち止まり二度見していたり、サインを求めている人もいる。
和登さんは患者さんと話し終えると、私達に視線を向け、こちらへやってきた。
結果説明待ちのため、イスに腰掛けている私と赤間さんに、
「赤間さん、今日は亜矢の付き添いありがとうございます。……もう終わった?」
赤間さんにお礼を言うと、私の目線に合わせるように和登さんは屈んだ。
「はい。小川先生がつきっきりでいてくださいましたので」
私の横にいた小川先生は「いえ! 今日の受診者は亜矢さんだけなので」と、ニコリと微笑んだ。そんな私達を見て、
「小川先生、今日の受診者のことは言わないでいいだろ。それに、名前呼びってやけに馴れ馴れしいけど、この患者さんが誰か分かってますよね?」
和登さんの煮えきらないような苛立ちを、笑顔越しに感じた。