『勘弁してほしい』は俺のセリフだ。
 帰ってくれと言っているにも関わらず、動こうとしない赤間さん。

 俺はそんなにお人好しではない。

「追い出されたら住むところもないんです。お願いします」

「羽倉家は?」

「こちらへ来ると決まったとき、羽倉家の契約も切れましたので」

「じゃあ自分の故郷に帰った方がいい。俺も、あなたを長く雇うつもりはないし、さっきも言ったけど住み込みなんてもってのほかなんで」

 冷たくあしらうと、赤間さんは目に涙をためていた。

 俺だって泣きたい。どうすんだよ、この状況。けれど、一番に考えることは亜矢の体のことだ。

「赤間さんは亜矢を良い目で見てなかったよね。もうあんな目でみないと約束できる?」

「――はい、申し訳ありません」

「じゃあ、亜矢のアパートに行って亜矢を手伝ってくれないかな。荷造りがあらかた終わったとはいえ、まだ荷物残ってるし手伝ってほしい。亜矢には俺の方から連絡しとくから。二人が戻ってきて、亜矢が赤間さんと生活していけそうってなったら働いてもらっていいから」

「――承知致しました」

「ただ、変なことを少しでもしたら即白紙に戻すから」

 赤間さんに釘をさし、亜矢に連絡を入れる。亜矢は戸惑いながらも、赤間さんが来ることを了承してくれた。