「いや、それはさすがに無理ですよ。毎日二時間ほど家の中を片付けていただいたら大丈夫なんで! 終わったらさっさと帰ってください。それに亜矢……僕の奥さんもしばらく帰れないですし、さすがに他の女性とひとつ屋根の下はマズイです!」
全否定すると赤間さんは「私と何かあるかもしれない、と?」と、俺の顔を覗き込んだ。
何かあるわけではないが、今目の前にいる赤間さんが悪魔にしか見えない。
「家の中にいれていただけませんか?」
赤間さんは早く入りたそうな、震える体を擦るような仕草をしてみせる。
「入れていただけません。そもそも俺、住み込みは同意してないんで」
「では、住み込みは無しで大丈夫ですので……」
「無理です。家事も料理も俺がしますんで、帰ってもらえます!? もうこの家に使用人は必要ないんで」
「……では、毎日二時間だけでもいいので。和登様のお側に置いてください。追い出されてしまったらもう働き口がないんです」
瞳をうるわせながら俺を見つめる赤間さん。
「ああ、そういえば弁護士の友人が使用人欲しがってたので今から連絡しますよ」
東郷には悪いが、話のネタで名前を出させてもらった。赤間さんは手をブンブンと振り「それだけは勘弁してください!」と俺に頭を下げた。