…………名前、なんだっけ。

 羽倉家の使用人はコロコロ変わるため、いちいち覚えていない。


「スミマセン、お名前お伺いしてもいいですか?」

『失礼しました。羽倉家で使用人をしておりました赤間と申します』

「父から聞いてます。すぐにそちらに向かいますのでお待ち下さい」

 赤間さんの年齢は恐らく俺と近しい気がする。

 門まで行き開ける。赤間さんは深々とハット帽を被っており、服装もどことなくお洒落だ。

 手には大きいスーツケースを持っており、鞄も一つ、肩から掛けて持っていた。

「わざわざありがとうございます。このスーツケースの中に掃除道具が入ってるんですか?」

 「重そうですね」とスーツケースを手に取り抱えると、「和登様にそのようなことをさせるわけにはいきません!」と、俺の腕からスーツケースを奪い取った。

 赤間さんの表情が真っ赤になっている。

「これは私の衣類等で、掃除道具はもうじき運び込まれますので」

「…………衣類?」

「はい。こちらで働く際の条件で、住み込みとして働くようにとご主人から告げられました」

 …………はあ!? まてまてまて。聞いてないぞ!