「羽倉先生のドクターチーム、知っています。以前テレビで紹介されていましたよね?」


「はい。僕を筆頭に組まれたチームなんですが、僕と同じ脳外科の仁田先生と麻酔医の柳先生を始めとした『チーム羽倉』です」

 お義父さんはチーム名を聞いて笑いを吐き出した。

 そして、「チーム名があるならやっぱり苗字は羽倉が良いんじゃないかね」と心配していた。

「仕事場では、苗字を咲村に変更したことは伏せますが、結婚したことは時期を見て言うつもりです。ただ、公表は亜矢さんの検査が終わってからにはなりますが……」

「それなら検査が終わってから結婚してもいいんじゃないか? なにも今急いでしなくても」

「今しなかったら取り返しがつかない事になりそうな予感がしたので。僕のワガママです。あと、結婚の公表についても、やましい何かがあるわけではなく、結婚の公表をしてしまえば僕が執刀の許可が得られない可能性がありますので」

「取り返しがつかないって……亜矢が死ぬかもしれないから、ですか?」

 俺の妙な言い回しに、また変に心配させてしまった。

「いえ。亜矢さんは自己肯定感が低いので、すぐ僕の側から離れようとするんです。そういう言い訳をたくさん持ってきては屁理屈言い出すんで、僕はその屁理屈を理屈に変えたいんです」