亜矢のお義父さん、お義母さんが俺が思っているような人でよかった。

 ちゃんと亜矢を大切にしてくれる人でよかった。

 お義母さんが差し出してくれている通帳一式を受け取らずに断る。

「お義母さん、これは受け取れません。このお金はお義母さんとお義父さんが老後の楽しみで使って下さい。今まで苦労したんですから」

「でも、和登くん、恐らくこの子貯金もそんなに……亜矢、今全財産いくらあるの!?」

 俺がいることをお構いなしに、お義母さんは亜矢に自分の貯蓄残高がいくらあるのかを質問した。

「……二十万」

 亜矢もお義母さんの質問に素直に答える。

「二十万!? アンタ、和登くんと一緒に生活するんでしょう!? そんなあるようなないようなお金じゃ、今のアパートの退去費で全部消えるでしょ! 今後どうするのよ!」

「……そ、それは……」

 捲し立てるように亜矢に詰め寄るお義母さん。亜矢もどうしようと、頭を悩ませ始めてしまった。

「大丈夫ですよ、お義母さん。亜矢さんには毎月不自由ないくらいの生活費を渡しますし、俺も今まで以上に仕事頑張るんで。ありがたいことにベリが丘総合病院は他の病院に比べて、凄く金銭面の待遇が良いので俺も助かってます。なので、そこは安心してください」

 俺は亜矢に働いてほしいわけじゃない。

 一生一緒にいてほしい。