まだ結婚を認められていないにも関わらず、亜矢のご両親をお義父さん、お義母さんと呼ぶ俺。
お義母さんはクスッと微笑みながら、ちょっとまってね、とその場から立ち上がり、リビングからいなくなってしまった。
「……羽倉先生、いや、和登くん。亜矢をよろしく頼みます。
お義父さんは婚姻届けを俺に返し、俺に向かって頭を下げた。すぐにお義父さんの視線は俺の隣りにいる亜矢に向けられた。
「亜矢はどうなんだ。和登くんと一緒にやっていけそうか?」
「――う、うん」
「料理も和登くんの口が合うものを作れるか? こんないい人に貰ってもらってるんだからな、掃除も家事も手抜きはダメなんだぞ!」
「うん、頑張る」
「和登くん、亜矢は昔からズボラなところがありますので、厳しく躾けてあげてください」
お義父さんは几帳面な人なんだな、と思いつつも、亜矢が俺のところに嫁げるかどうかを最後まで心配してくれていた。
俺とお義父さんが話しているところにお義母さんが、
「羽……いえ、和登くん、受け取って」
お義母さんの手に持たれていた物は、通帳と印鑑とカードが一式、握られていた。それを俺に差し出している。