『半年で離婚する』なんて言わなきゃ良かった。

 亜矢には欲しがっていた指輪を渡したけれど、俺はちゃっかり亜矢がサンプルで指にはめていた一千万円の指輪を購入した。

 店員にも新作が出ないことは確認済み。

 この指輪は半年後に渡そうと思っている。

 受け取ってもらえるか、イチかバチかの運命をこの指輪は背負っている。

 そもそも半年で離婚する気でいるなら、新居に引っ越そうだなんて考えない。けれど、半年で離婚すると言わなきゃ亜矢は結婚してくれなかった。

 離婚なんて死んでもしない。絶対しない。ずっと願い続けた未来に今、やっと向き合えているのに。

 半年後、この想いを伝えたらどう思われるだろう。

 そんなことを考えながら、ホテルのお土産コーナーで亜矢のご両親と、お供え物の手土産を選ぶ。


「亜矢の両親は何が好き? 和菓子? 洋菓子?」

「えっと、どちらかといえば和菓子です」

「どちらかならあんまり大差ないだろうから、どっちも買おうか。あと、何かプレゼントも買っていきたいなーでも、あまり負担にもさせたくないし。入浴剤とか使う?」

「ありがとうございます。母は好きで良く入れてました」

「じゃあ、入浴剤と、あとはお義父さんは何が好きかな? お酒が好きかな?」

「父はコーヒーを好んで飲んでいましたが、そんなに気を遣わなくても……むしろ、私、和登さんのご両親に何も持っていけなかったですし」

 母に腹の虫がおさまらないほどの怒りをぶつけられたはずなのに、それでも俺の親を気遣っている亜矢はすごい。

 こんな素敵な女性が俺の側にいてくれていることが、ただただ嬉しい。