「だから、母さんに全部事情は説明したって。何度言えば分かるんだよ。ハァ、分かった。俺が言い過ぎた。うん、羽倉家との縁は切らないし、父さんともたまに会うから。でも、俺は羽倉家よりも亜矢が大切だから。その亜矢を母さんは傷つけたんだよ」
和登さんが電話越しで話している人は身近な人だということが分かった。
「……うん、そのうち父さんにも会わせるから。いない時にお邪魔してごめん、もう夜中だから切るよ」
電話を終えた和登さんはハアと、大きくため息を吐いた。
そのままソファーに横なったようで、しばらくすると寝息が聞こえてきた。完璧に出遅れてしまった。
『羽倉家よりも亜矢が大切』
この言葉を聞けて胸がいっぱいになる。
和登さん……
私は和登さんがどうしようもなく好き、大好き。この気持ちに嘘はない。
寝室からリビングまで毛布を運ぶ。ソファーで寝ている和登さんを起こさないようにゆっくりと毛布をかける。
……今だけ、一緒にくっついて寝ても許されるだろうか。