「なにを言ってるの? 娘を溺愛しまくっていた母さんが、大好きな虹湖に怒ったことなんて、一度もなかったでしょ?」


「今もたまに、虹湖の写真をながめてるよな。元気にしてるといいなって涙を浮かべながら」



そっか、お兄ちゃんたちは今でも知らないんだ。

幼稚園児だった私が、かげでお母さんに怒鳴られ続けていたことを。



「虹湖が母さんを嫌っているから、父さんとこの家に残ったみたいだけど」


「母さんは虹湖のこと、生まれてからずっと大好きなんだよ。たまには母さんに手紙の一つでも送ってあげてよ。母さん喜ぶから」



……そうですか。

兄妹が別々に暮らしているのは、私のせいってことになっているんですか。



さすが演技派のお母さん。

息子に愛されるためのシナリオを、完璧に作りあげているんだね。



「妹のサンタクロースになれたことだし、俺たちは行くね」


「外の車の中に、マネージャを待たせているんだ」