優しい声。

宝物をめでるように大事に抱きしめられて、私の瞳から涙があふれ出す。



考え直してくれたのかな?

これからもこのお家に住んで、娘の私のそばにいてくれるのかな?



かすかな期待がこみあげてきたのに、やっぱり現実は残酷(ざんこく)で。

お母さんは私の耳に口を当てると、私にしか聞こえない低い声をもらした。



「お母さんにこびる虹湖の笑顔、もう見なくて済むと思ったら、嬉しくて涙がとまらなくなっちゃったわ」



……えっ?



「アヤとネオンはアイドルとして世界に羽ばたくの。二人の足を引っ張るような真似をしたら、絶対に許さないから」



おぞましい声を、私の耳に吹きかけたお母さん。

そしてマリア様スマイルを顔にはりつけ、もう一度私をギュー。



「虹湖、幸せになるのよ。お母さんずっと応援してるからね」



娘を溺愛する良い母を、お兄ちゃん達にアピールすると

魔女みたいな不気味な笑みを私だけに飛ばし

お兄ちゃんたちを連れ、家を出て行ってしまいました。