「信じられない。奨学生は国家が育成したいと思った人材。それを侮るなどと、貴族の風上にも置けない……ませんわ」

 怒りですごい怖い顔になっている彼女に、私はつい顔が綻んでしまう。
 私のヘラヘラに気づくと、カイ様はキッと私を睨んだ。

「何がおかしいんですの」
「えへへ……ごめんなさい。あなたが綺麗でかっこいいから、惚れ惚れちゃって」
「……ま、まあ目立ちすぎましたわね、不覚ですわ」

 彼女ははっとした顔をして、ごほん、と咳払いして顔をプイッとする。

「ところであなた。これから用事はあるかしら?」
「特にないけれど……」

 店長さんも食堂を出る時に「そのまま上がっていいよ」といってくれていたし。すると彼女は立ち止まり、私の手を掴んだまま、私にこう命じたのだった。

「あなた。今日から寮で、私の隣室に来なさい。ちょうど今、誰もいないから」
「え……ええー!!!??」

 私の叫び声で、ばさばさと鳥が飛んでいった。

◇◇◇

 この国では出生時に、『魔力持ち』かどうか聖女看護師によって血液判定を受ける決まりがある。現代では『平民貴族問わず、10%が魔力持ち』というのが定説だ。