「え、ええと……でも、まあ、私が奨学生なのは事実ですし」
「それがなんだというの?」
「っ……!」

 カイ様は言い切って、私に向かってまっすぐに指を突きつける。

「そもそも、奨学生というのは国家に学ぶべき価値があると認められた生徒、つまり国の宝。あなたが自分を卑下するのは、自分を支援する国の判断を卑下することと同じ。堂々と胸を張って学び、国家に貢献なさい」
「は……はい」

 私は気おされて頷いた。
 カイ様は、静まり返った令息令嬢らに冷ややかな一瞥を向ける。

「貴族たるものは国と民を守るためにその青い血を継ぐ者。血と共に誇りも受け継いだ者なれば、国の財産たる彼女に危害を加えることはないとは思いますけれどね」
 
 場がしんと凍りつく。

「さ、参りましょう。風魔法で乾かすにしても、一度洗わなくては」
「あ、はい……」

 私は彼女に手を取られ、二人で食堂を後にする。
 背後から風紀監視官の声と、涙声になった令嬢たちの声が聞こえた。
 ずんずんと私をどこかに連れていきながら、カイ様はぶつぶつと呟く。