「それはそうでしょう。みんなそう思ってます。私なんて無理ですから……」

「総帥は俺を使って崇さんを支配したいし、女のお前を警戒してる。縁談の話を聞いたか?」

「聞きました。何考えてんでしょうね、御曹司」

「お前を側に置くことから全てを始めたいんだろ。ただ、継承するだけじゃなくて自分の世界を作りたいんだ。さすが専務の教え子だよ」

「私はそういう対象じゃありませんってお伝え下さったそうですので、黒沢さんも喜んだんじゃないですか?」

「馬鹿だな、香月。仕事は出来るくせに相変わらず鈍い。まあ、とにかく斉藤と別れて本当に良かった。お前は大切な俺の後輩だし、あんなチャラい奴にもったいない。とっととお前から振ってやればよかったのに……あいつのことは戻ってきても心配ないぞ。何かしたら俺がぶん殴って押さえてやるからな」

「……ありがとうございます」

 私が本部秘書課に戻りたくない本当の理由をわかってくれている。