「香月。今、いいか?」
「はい」
「驚いただろ?」
「それはもう驚きました。辰巳さん、まさか本当に外れるわけじゃないですよね」
「外れた方が彼のためだと思う。それに、後任がお前なら俺に聞きやすいだろうし、お前を通して彼に接触しているようなものだから俺はそれでも構わない」
「辰巳さん、今何をなさっているんです?」
「総帥秘書の新藤さんの手伝い。というか、新藤さんが辞めるかもしれないんだ」
「ええ!?」
「奥様がご病気で結構重篤なんだ。今も早く帰ったり、遅く出たりしている。本当は斉藤が新藤さんの後につくと立候補していたが、新藤さんが俺の方が総帥の仕事を知っているからと言って、結局俺が全てやっている。だが、総帥はいずれ時期を見て俺を崇さんに戻す気だろうな」