何かブツブツと小さい声であっちの方向を向いて言う。何なの?

「しょうがないな。じゃあ、その条件をのむから、とりあえず俺の秘書になってくれるよな?」

「ええ。でもあとでやっぱりお前なんてとか影で言わない約束をしてください。いくら出来なくても怒らないでくださいね」

「ああ、もちろんだ、ありがとう。やった!」

 崇さんが笑った。うそでしょ……。

 普段、全く笑わない彼が満面の笑みで私の手を取って立ち上がった。

 これを見たら、イエスと言うしかない。普段からこうやって笑ってればいいのに……。

 子供のように嬉しそう。

「そうだ、辰巳がいなくても大丈夫だから心配するな。アメリカで俺はひとりだったが、父の指図を受けずに、ようやく自分の思うように仕事が出来た。父は俺の成果を見て辰巳を外すことを認めた」