「俺は結婚相手どころか秘書も選べないのか?女性秘書自体を警戒する父の気持ちはわからないでもないが、俺にだって自分の周りに置く人間を選ぶ権利がある」

 辛そうな彼の横顔を見ると心が痛んだ。今までずっと、総帥に遠慮して色々我慢していたのかもしれない。

『彼が干からびる前に……水を……たまには肥料もやってね……』

 専務の言葉が頭に蘇った。私には残ってやることがあると専務は言っていた。

 きっと彼がこうなることもわかっていて、財閥に残っていずれ彼の秘書となり、助けていけと言いたかったんだろう。ようやく腑に落ちた。

「わかりました。私で良ければ崇さんのために出来るだけのことをします。でも……半年猶予を下さい」

「半年?」

「半年秘書として私を使って、やっぱり使えないと思われたり、私がどうしても無理で辛かったら、支社へ戻して頂けませんか?」