ガチャンと落ちた缶を横から長い手が伸びて拾う。取り出すと私の前に出した。見ると崇さんだ。

「おはよう。香月、ミルクティーが好きなのか?コーヒーは入れるのうまいのに、自分は紅茶なんだな」

「え?……はい」

「さてとお前の仕事を片付けるぞ。説明するから一緒に来い」

 部長室へ入ると、向かい合わせに座る。目の前のソファを示された。躊躇している私を指で座れと合図する。

「お前、佐々木部長の様子を探るように辰巳に頼まれて来てたんじゃないのか?」

「ご存じだったんですか……」
 
「辰巳には俺がアメリカへ行っている間にやっておけと言ったのに、お前を使うとは……」

「それはその、辰巳さんはお忙しいからこっちには来られないでしょう」

「辰巳に頼んだのに、勝手なことをしやがって。少し考えを改めさせないと、今後俺の下に付けられない。代替わりを目の前にして親父の院政なんてまっぴらだ」