「ええっ!?」
断った?うそでしょ?私が異動する直前、真紀から聞いていた話だ。総帥自らが根回しして財閥グループのために持ってきた大企業のお嬢様との縁談だと聞いた。
変な話、黒沢さんはきっとショックだろうとひとりほくそ笑んでいたけど、断ったとは聞いてない。驚いている私を見て彼は言った。
「断ったのを知らなかったのか?」
「こちらに来て半年になります。そういう情報は入りません」
「あのな、香月」
「はい」
「総帥は香月を秘書にしたいという俺の意向を後から聞いて、お前を俺から遠ざけることを決めたらしい。だが、俺は専務を更迭する代わりにどうしても香月を秘書にすることだけは譲らないと昨日面と向かって言ってきた。これは俺の個人的な今後の問題だ」