「ちょ、ちょっと待ってください……それはまずいです」

「おい、支社長!」

「……あ、はい……」

「ちょっと、外へ出ていてもらっていいか?」

「は、はい……」

 そう言うと、可哀想な支社長はすごすごと出ていった。

 崇さんがこんなところへわざわざ来た段階で何かあると思っていた。私は腹を決めた。

 深呼吸をすると、彼に向かって丁寧に頭を下げた。悔しいから何事もなかったかのようにとりあえず挨拶をした。

「お帰りなさいませ。随分と予定より早いお戻りでしたね」
 
「香月。先週、辰巳の電話で初めてお前が飛ばされたと聞いた。親父が俺に隠していたそうだ。心底頭にきた。だから一旦戻ってきたんだ。専務からは辞める前に連絡があった。無関係のお前までまさか……総会後すぐは本部にいたじゃないか」