返事をした私を、崇さんが怖い目で睨んだ。何なの?勝手過ぎる。
すると、支社長が焦ったように立ち上がって話し出した。
「すみません……あの、ですね、香月さんの事は、実は彼女がこちらへ来る際に総帥から指示がありました。万が一にも、もしこうやって崇さんが来られても、あのですね……本部へ決して……戻すなと……」
私は支社長の言葉を聞いて固まった。やはりそうだったのか……辞める話が異動になっておかしいと思ってはいた。私は島流し。決して都には戻れないのね。
「いいか、支社長」
「はい、ですので……だめ……なんですよ」
冷や汗を流しながら、彼の前に立ち尽くす支社長。お盆を持って固まる私。
彼は私達を無視して、机を長い指でコツコツと叩きながら話しだした。
「彼女を連れ戻すことは……総帥に了解を得ている。心配なら本部へ聞いてもらって構わない」