「どうしたの?」

「コーヒー、御曹司は香月さんに入れてもらいたかったんですって……」

「はあ?」

 プリプリしていなくなった。訳がわからない。もしかして、コーヒーを何かいれ間違えたのかしら?入るのが怖い。深呼吸をして、頭を下げて入った。

「失礼します。資料をお持ちしました」

 久しぶりの崇さんだ。顔を見られない。下を向いたまま入る。彼の香水の香りがする。机に持ってきた資料をのせた。

 そうだ、コーヒー何かあったのかな?一応ちらっと彼の手元のコーヒーを見た。特に問題はなさそうだけど……。彼がコーヒーを一口飲んで、ため息。じろっと私を見た。

「香月。これ……あとで入れ直して」

 小さいつぶやきが聞こえた。今、私の名前呼んだ?呼んだよね……。