「ああ、坂本君は今外出中だよ」

「わかりました」

 そうやって始まった私の支社生活。佳奈美さんは年も近くて優しかったので、すぐに仲良くなった。

 そして、坂本課長は同期だった。どうやら佐々木部長の件は彼が密告したようだった。

 口にはしないが、私はデジタルが苦手な支社長と案件の実態を知る坂本君に囲まれて思ったよりも早く問題に当たりを付けることができた。

 それらしきものをファイルして、辰巳さんに本社便でいくつか送った。私がここに来る意味はすでに達成したような気がする。あとは伸び伸びと生活するだけだ。

 支社はのんびりというのとは違うのだが、本部の緊張した日々からは考えられない毎日だ。やれる範囲でできることをしているだけだ。後ろから、声がかかった。

「おーい、香月。お前いつになったら俺のことやってくれんの?明後日までに作ってくれるんだよな?」

 坂本君は、来週重要なプレゼンを控えている。相当の金額の案件だ。