「父さん。結構な公私混同ぶりだな。黒沢の父親に言えたクチか?これはきちんと罰が必要だな。日傘さんだけ不公平だ」

「だから先日、日傘君に電話で言われたよ。自分の秘蔵っ子である香月さんをお前の交際相手にすることは私への最大の復讐なのだとね」

「……あはは、それは最高だ!さすが専務。俺が尊敬するだけのことはある」

「もう、崇さんったら。すみません、総帥……」

「そしてもうひとつ言っていた。彼女を秘書として崇に預けることは、きっといずれ財閥のためになるとね。確かにそれはその通りかもしれん。すでにお前にその兆しが見えている。だから私も、あのときは素直に彼へ礼を述べたよ」

 専務ったら……嬉しすぎる。泣きそうになった。

「そうねえ、崇。お前に彼女は高嶺の花ね。きちんとしないとフラれるわよ。まだお付き合いはじめたばかりなのに浮かれていて……ねえ、香月さん。呆れるでしょ」

「昔の彼は笑顔を見せないポーカーフェイスで有名でした。だから、私の前で見せてくれるこの姿は特別だと思うんです。それだけでも嬉しいんです」