お土産はフルーツケーキではなく、私の好きなお店の和菓子を買った。小豆がとても美味しいと私が思っているお店だ。お渡ししたら大奥様もごひいきのお店のひとつだったそうで、とても喜んでくださった。久しぶりに食べたそうだ。

 大奥様は大きな目や口元が彼に似ていた。そして、思った以上に茶目っけのある方で、そこも彼に似ていた。

 驚いたことに、私との交際をとても喜んで下さった。そして私に『色々大変だったでしょ』とさりげなく横の総帥に嫌みを言うことも忘れていなかった。

「せっかくですからひとつ秘密を教えてあげましょう。日傘君はその昔、私の縁談相手になるかもしれない人だったのよ」

「おい!余計なことを言うな!」

 奥様に向かって声を荒げた総帥とあまりの驚きに固まった崇さんと私……。

「「……」」

 奥様は私を見ながらにこにこと笑っている。ようやく全てが腑に落ちた。そして、総帥は奥様に頭が上がらないという話を彼がしていたことを思い出した。