「崇さんが戻って来たときに君を専属秘書とするためだったのに、辞めたいと言われたときは頭が真っ白になりましたよ。まさか、彼が君にそのことを何も伝えていないとは知らず、辰巳と相談して総帥を丸め込んで異動を決めました。あんなに必死になったのは初めてでしたよ」
「ご迷惑おかけしました」
「とんでもない。部長の捜査もよくやって下さった。今更だがありがとうございました」
「こちらこそ、色々ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
新藤さんが立ち上がって私に頭を下げてくれた。丁寧な人だ。私にまで敬語を使う。教えて頂きたいことがこれからも山ほどある。
* * * *
彼が明日はいつものようなスーツではなく、普段の姿で来て欲しいと言う。
大奥様へお目にかかるのに変な格好はできない。お気に入りのブランドのワンピース。フレアスカートなので少しカジュアルに見えるかもしれない。その上に白いジャケットを合わせた。