彼女が戻ってきて二ヶ月。見るからに彼女を特別扱いし、彼女には優しいまなざしを向ける彼を見て、皆私の顔色をうかがいながら噂するようになった。

 こんなはずではなかった。今頃盛大に婚約披露のパーティーが行われるはずだったのだ。

 しかも、伸吾まで崇さんから目の敵にされて営業へ飛ばされた。飛ばされた日の夜のことだ。いつものホテルで彼の鬱憤を身体で受け止めた。ふたりの怒りの源は一緒になった。

「伸吾……聞きたいことがあるのよ」

 ベッドに身を起こして私はシャワーから戻ってきてビールを飲んでいる伸吾に言った。

「ああ、何でも聞けよ。今日はお前のお陰でだいぶスッキリした」

「あの子、机の鍵をどこにつけて持ってるか、あんたなら知ってる?」

 あの子が誰かすぐにわかったんだろう。聞き返しもせず伸吾は私を見た。