「あの子、秘書課に慣れなくて辛そうよ。あんた、ちょっと優しくしてみたら?」

 伸吾は私を驚いた表情で見た。そして、ニヤリと笑うと耳元で言う。

「簡単なことだ。でも、美保が俺との夜も今まで通り続けるのが条件。それでもいいなら駒になってやるよ」

 私はうなずいた。私にとっては何より崇さんの一番になることが何より大事だ。伸吾は私を使って榊原に取り入る気だろう。今も結局月に二回ほど、伸吾と逢瀬を重ねている。彼は私に夢中だ。色々使える大切な駒なのだ。

* * * *

 笑ってしまった。あれから二ヶ月、伸吾の手管に簡単に香月さんが堕ちた。

 秘書課ではクールビューティーといわれていた彼女があっけなく伸吾のような男におちて、皆びっくりしていた。でも彼女が仕事や人間関係の複雑な秘書課で悩んでいたのを、伸吾が優しくしてあげただけ……。

 私の取り巻きも協力した。彼女と親しくしないよう釘を刺しておいたのだ。